【コミックウォーカー】ガンカンジャ

【コミックウォーカー】ガンカンジャ

フツー・作

8年間、がんとの闘病の末亡くなった作者の父に捧げる形で描かれた作品。末期の胃がんに侵された26歳の青年を主人公に、闘病の日々とそれを取り巻く家族や恋人の人間模様、のしかかる厳しい現実を描き、「人はがんに侵された時、どう生き、どう死ねばいいのか」を問いかける。娯楽作品とは一線を画した、異色のウェブコミック。

がん。日本人の3大死因のひとつと言われており、いまだに人類が完全攻略できていない、いわば「不治の病」です。しかし、ほかの2つ(脳卒中、心臓病)に比べ、いまひとつピンとこないのはなぜでしょうか?

おそらく、突然倒れるといった劇的な症状や発作がなく、気がつかないまま進行していき、症状が出た時にはすでに末期—という、静かな進み方をするからでしょう。しかし、病名を知った時の精神的なショック、治療の苦しさなど、本人にも周囲にも与えるインパクトがとてつもなく大きいのが、がんの特徴でもあります。主人公は、あくまでも淡々と語っていきますが、抑制されたその語り口が、かえって「がん」という病気の持つインパクトの大きさを浮き彫りにしています。

抗がん剤の副作用に強烈な吐き気があることは知られていますが、主人公はその感覚を「できることなら体を内側から裏返して 冷たい水でくまなくすすぎたい」と表現します。胃液しか吐くものがなくなってなお止まらない吐き気に対して「もし 僕の電源を入れるスイッチがあるなら 少しの間でいいから電源を切ってほしかった」。がんになった人にしかわからない苦しみを、これほど生々しく、なおかつ的確に表現した言葉はありません。

いまひとつ現実味のない「がん」ですが、誰もがなる可能性があり、そして誰もが身内に患者を抱える可能性があります。そして、いやおうなしにがんは本人と周囲の暮らしを変えてしまいます。「当たり前にできてたことが もうできなくなるとは思ってなかった ただ 人生は続くだろうと信じていた」これが、がん患者の実感でしょう。

「日常」とは、脆弱なものです。あらゆることが、細かいバランスの中で成り立っており、そのどこかが崩れると、あっという間に全体がバラバラになってしまいます。普通に生きることが、どれだけ素晴らしく、どれだけありがたいことか。月並みですが、この作品を読むとあらゆるコマから人生の素晴らしさ、日々を精一杯生きることの大切さがにじみ出ています。

生まれた以上、遅かれ早かれ誰にでも死はやってきます。必要以上にがんを怖がることはありませんが、自分ががんになったらどうするか……と想像しながら読むと、自分はどう生き、どう死ぬのかという根本的な命題を考えさせられます。確かに重いですが、一度は読んでおいた方がいい作品です。「自分だけは……」なんてことは、この世の中にはあり得ないのですから。

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