おそ松さんをより楽しむための「原点『おそ松くん』考察」

おそ松さんをより楽しむための「原点『おそ松くん』考察」
アニメ二期も決定し、とどまることを知らない「おそ松さん」ムーブメント。
しかしっ!「にわか」扱いされないためにも、ぜひ原点である赤塚不二夫作「おそ松くん」もチェックしてもらいたい。本稿ではこの原点「おそ松くん」の魅力を紹介していきたい。

「6つ子」の誕生

 1962年 『おそ松くん』 週刊少年サンデーから、「4週限り」の読み切りとして依頼された。赤塚は「どうせ4週じゃないか、思いっきり暴れて終わってやろう」と、それまでの漫画よりテンポを速め、完全にスラプスティック調にしたところ好評で、その後6年もの連載になる。

「6つ子」の設定は、「1950年の映画『一ダースなら安くなる』をヒントにしているが、一コマに12人は描ききれないので、半分の6人にした」、と赤塚は述べている。赤塚は語っていないが、赤塚自身が「6人兄弟(死別・生別した弟妹も含めて)の長男」だったことが、「6人」とし、「おそ松は長男」とした思いの根底にあるのかもしれない。また、「親でも区別のつかないほど、同じ顔をした6人兄弟」というのは、赤塚の奥さんの出したアイデアだった。

『おそ松くん』の時代

 この時代は、戦後の復興が進むと同時に、核家族化・少子化により、子供が甘やかされて弱々しくなった時代だった。それに対し、赤塚が日本に引き揚げ、奈良の母の実家にいた時代について、自伝の中ではこう書かれている。――「とにかく子供がやりたいと思う限りの遊びも悪戯もずっこけも、まさに『おそ松くん』の世界そのものを生きた2年間だった」――。戦中戦後に少年時代を送り、さんざん悪さをしてきた赤塚は、活力溢れるキャラが暴れまわる物語を描きたかったのだ。そう、『おそ松くん』は、赤塚の少年時代の、幸福な思い出の世界なのである。

変化する物語と、実在のモデルがいたキャラクターたち

 6年にわたる長期連載の中で、『おそ松くん』の物語も変化していく。初期においては、「同じ顔の6人兄弟」に関するドタバタだったのが、マンネリ化してくると、チビ太・イヤミなどといった強烈な個性を持ったキャラとの対決になり、後期においては完全にイヤミが主人公で、6つ子は出番すら失っていく。

 特筆すべきは、こうした「名キャラクター」に、実在のモデルがいたことである。

「チビ太」は、赤塚が奈良にいた頃の、運送屋の3歳の子。年長の子にどんなに小突かれてもついてくるバイタリティーがあり、食欲旺盛だった。

「ハタ坊」は、その3歳の子が年長の子に従順で、主体性がなく依存心が強いところ。

「イヤミ」。戦時中から、日本人の海外旅行は政府によって規制され、職業上の理由があれば海外に行けるようになったのが1963年、自由化されたのは64年。その頃、海外に行った報道関係者が赤塚の元を訪れて自慢話をするのが、滑稽だったという。また、萩原朔太郎の「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」の頃から、日本人には「フランス帰り」には憧れがあった。また「三枚出っ歯」は、『おそ松くん』の初代担当者である樺島基弘記者の総入れ歯だったという。

「デカパン」のモデルは、「週刊少年サンデー」の編集長の堧水尾道雄。威厳のある役が多い。

「ダヨーン」のモデルは、つのだじろうの実弟の角田隆。

 こうした個性的なキャラたちが、「主人公を押しのけてしまう」ほどのパワーを持っている理由は、単に想像力で作られたのではなく、赤塚の人間観察から生まれてきているからかもしれない。

社会的影響

 アニメは最高視聴率34.7%を記録し、子供たちが「シェー」「ダヨ~ン」と奇怪なセリフを真似し始めると、良識あるPTAが「正しい日本語を乱す張本人!」「言葉が汚い!」クレームをつける。これに対し赤塚は、「言葉は生き物だ!」と主張して、譲らなかったという。そう考えると、『おそ松さん』の1話・3話でクレームが来たのは、まさに「赤塚ギャグ」復活の結果だと言えるだろう。

その後の『おそ松くん』作品

 新たな「面白さ」を求めて、『おそ松くん』はさらに変化していく。『天才バカボン』『もーれつア太郎』で、自らが新たなギャグ漫画の地平を切り開いたために、皮肉にも古くなり、打ち切りを宣言された赤塚は、『おそ松くん』を月刊の別冊少年サンデーに移し、長編化させる。そこで描かれたのは、映画1本分のストーリーを、『おそ松くん』のキャラで演ずる、というものだった。『イヤミはひとり風の中』『チビ太の金庫破り』など、後に「泣ける傑作」と呼ばれる作品も、ここで生まれている。

 その後も、週刊少年キングでの再連載、アニメ第2作に合わせてコミックボンボンでの連載などがあったが、『おそ松くん』は、静かにその使命を終えていく。アニメ第2作では、イヤミの声優として明石家さんまがオファーされていたが、ギャラの面で折り合わず、事務所が勝手に断ったことを、さんまは心残りだったという。残念ではあるが、栄光の時は去っていたのかもしれない。

記事出典:超解読 アニメ「おそ松さん」松考察 ニートたち!おやつですよ より

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